古文コラム

櫻井先生の「寄り道コラム」

古文講師・櫻井先生のコラムです。つれづれなるままに更新します。

【第14回】エール

全ての受験生のみなさんがベストを尽くせますように。

【第13回】 ひとりごと


あながちなる決まり事、わりなきものなり。つとめておどろく例のことになりぬれど、苦しかりぬべき心地は “これ行ひにや”「いぎたなし」とののしられようとも例ならず朝寝したし

こんばんは。

今回は泣き言から始まりました。

私の苦手なことは早起き。寝起きも(控えめに言っても)よくないです。朝型の生活の大事さはよくわかっていますが克服ならず。通常は6時起床が(この時間でも苦痛)、コロナの事情で5時起床が4月から続いています。この文章は6月に5時起床の延長決定に落胆した時の感情を、頻出単語と文法を使って文語体で表現した魂の叫びなのです。


<単語> 太字で表示

あながちなる 形容動詞「あながちなり」連体形 強引だ

わりなき 形容詞「わりなし」連体形 どうしようもない

おどろく 四段動詞「おどろく」連体形 起きる 目を覚ます

例の いつものように

ののしら 四段動詞「ののしる」未然形 大声で騒ぐ

例ならず 普段と違う


<文法> 下線部

苦しかりぬべき 形容詞「苦し」連用形+完了の助動詞「ぬ」終止形+推量の助動詞「べし」連体形 「ぬべし」で強意の用法

にや 断定の助動詞「なり」連用形+疑問の係り結び 結び「あらむ」は省略

たし 願望の助動詞「たし」終止形

(解釈)『強引な延長決定事項にどうしようもなく耐えがたい気持ち。早朝に起きるのはいつものようになっていたけれど、つらいと感じてしまう気持ち “これは(=早起きって)修行だろうか” 「寝坊だ!」と騒がれてもいいから、普段と違って朝遅くまで寝ていたい』

超朝型の生活になって1日の時間が長く感じます。

起床後2時間って活動のゴールデンタイムらしく、この貴重な時間を活用すべく体内時計を調整中です。

それでは、また。








【第12回】はじめましてのみなさんへ ~いまできること~


こんばんは。現在オンライン授業に切り替わっていますが、いまだ(人見知りゆえ)カメラ目線に慣れず、ドギマギしながら教壇の前に立ってます。


県内の学校は5月末まで休校延長が決定しましたが、最初に休校要請が出た頃にはここまでの感染拡大は思いもよらないことでした。


まず3月から休校が始まりました。あの時は行動範囲を制限していれば、休校は

※「あからさま」に思い、新学期には通常の生活に戻ると信じていました。


ところが、日夜流れてくる報道から状況は悪化していると思うばかり。そして休校開始から一ヶ月が経過し、緊急事態宣言が発令されました。買い占め騒動に自粛警察なる言葉も飛び出しました。塞ぎこむような情報番組は見ないで、いまできることに向き合うことにしています。


みなさんが古文対策としていまできることは、単語や文法の基礎固めです。基礎のみで退屈と感じたら読解問題に取り組んでもいいでしょう。ちなみに私のいまできることを以下にまとめました。


①(もちろん)英學會の授業の構想

②休校中のわが子の宿題の監視(汗)

③片思い中のある検定試験対策


など、目標は高めに設定しました。こうして宣言することで、よりプレッシャーを自分にかけます。一日の限られた時間、三食作って、体をいたわりながら最善を尽くすつもりです! のちにこの自粛生活が※「いたづら」ではなかったな~と振り返ることができればと思います。


※「あからさま」「いたづら」は古文必須単語です。現代語とは意味が異なります。


気になった人は調べて、本文に当てはめて読んでみてください。

それでは、また。






【第11回 】知識と経験のアップデート



こんにちは。

今期の「古文読解」の授業が終了しました。


私が教室へ現れると「あっ、今日は土曜日」と認識する人もいたのではないでしょうか(^^)



今期は夏期講習やコラム執筆など、新たなことにチャレンジしました。

新たなことに取り組むことは勇気がいることですが、今まで何気に経験していたことが

活用できることに気づきました。


不要な勉強、不毛な仕事、組織の中でただ通り過ぎた時間ではなかったなと人生を

噛み締めるのです。



今週末はセンター試験。

皆さんが万全な状態で本番に臨み、ベストを尽くせますことを願います。



それでは、また。







【第10回】五・七・五・七・七

①春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山

②あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む

こんにちは。いきなりですが、百人一首です。

小学生の子どもが冬休みの宿題で一生懸命暗唱しています。風物詩ですね。この百人一首、和歌のベスト盤ともいえますが、じっくり見ると文法要素が盛り込まれています。修辞技法としても枕詞、序詞、掛詞に縁語が含まれた和歌にも出会えます。ちなみに①には「白妙の」は「衣」(ほか「袖」「藤」「雪」)にかかる枕詞、②には「あしびきの」が「山」(ほか「峰」など)にかかる枕詞と上三句が「ながながし」を引き出すための序詞が盛り込まれています。

センター試験では文法問題は必須です。いまできる文法対策として、百人一首から助動詞を抜き出したり、係り結びの法則や修辞技法を見つけるなど、短いものだからできることがあります。

そして和歌が盛り込まれた作品がセンター試験に出されているのも最近の傾向です。和歌は本文の中で重要な役割を持ちます。なぜなら・・・

「和歌は本文中の起こった出来事と現状をなぞらえて感情表現したもの」だからです。物語の中盤から終盤に登場するのはこのためです。和歌に関する心情問題も出題されています。和歌はとても出しがいのある分野なのです。

心情問題対策としては、登場人物の感情が生まれるきっかけとなる出来事をみつける読み方をすること。人物の感情というのは何もないところから突然生まれません。

登場人物(主語)+ 行動(述語)→ 出来事 →感情表現(形容詞・形容動詞)出題範囲はこの形式を繰り返しています。「起 承 転 結」ですね。

特に「転」の箇所は文字通り、話が急変することが多いです。もしかしたら本文がわかりにくく、読み疲れてくるのも「転」のあたりからではないでしょうか。読み疲れを軽くするために段落ごとに話を大まかに主語と述語をとらえて次へ進むと、全体を通しで読むより疲れは軽くなると思います。

何かを見出そうとしながらも悩んでる人、試してみてはどうでしょうか。

それでは、また。







【第9回】偲び草

こんにちは。今年も終わりが近づいてまいりました。

そんな一年をある方々を偲びながら振り返りたいと思います。

まず1月に亡くなられた橋本治氏。数々の著名作品のなか、私の印象に強く残っているのは、やはり『桃尻語訳 枕草子』です。現代でもこの手の語り口調(特に女子高生風?)の古典訳本は出版されていると思いますが、橋本氏はそのさきがけだったのではないかと思います。桃尻語本は話題になり、大ヒットしました。私は当時高校生だった記憶があるような、ないような(汗)もともと古典的な訳が好みだった私は内容に興味を持ち、全巻購入しました。桃尻語訳はとっつきにくい古典と学生との距離を縮めてくれたのだと思います。しっとり古風な訳派な私は、一読後全巻妹に譲り、大変有難がられました。橋本氏は書物だけでなく、NHK(当時教育テレビ:現Eテレ)での「まんがで読む古典シリーズ」映像作品でも、古典の魅力を広められた功労者だと思います。

そしてもう一人は6月に亡くなられた田辺聖子さん。この方の古典作品の現代語訳本にも大変お世話になりました。『竹取物語』『落窪物語』、そして『新源氏物語』ですね。当時高校生には難解な『源氏物語』対策は、もっぱら漫画『あさきゆめみし』を読破することでした。ですが、それだけではどうにも理解しがたい場面もあったのです。そこで出会ったのが小説『新源氏物語』でした。まるで漫画の内容を補うような登場人物の描写(特に光源氏)に心情表現の和歌。同時に田辺聖子さんの文体にも惹かれ、作品への理解だけでなく、光源氏のイメージがプラスに転じた作品でした。読み進めるとモヤモヤしていた「なぜ光源氏に魅力を感じるのか?」の疑問を自分なりに解消できたのもこの小説があったからです。

そんな素晴らしい数々の作品を世に送り出されたお二人が同じ年に亡くなられたのは偶然でしょうか。青春の思い出を思い返さずにはいられない今年の偲び事でした。

あらためてご冥福をお祈りいたします。 合掌。








【第8回】 高御座

こんにちは。お久しぶりです。

上田先生 こちらに「寄り道」してくださってありがとうございます。

またのお越しをお待ちしております(^^)

さて、上田先生のコラムにもありました即位礼正殿の儀。

その儀式で国内外に即位を宣言された玉座「高御座(たかみくら)」が東京で一般公開中です。

「高御座」とは天皇の御座所で、古典作品の一場面にも登場します。藤原道長の栄

華を描いた『大鏡』の「肝試し(道長の豪胆)」の場面を思い出す人もいるのではないでしょうか。古典作品の中でしか認識していなかった高御座の公開…きっと神々しい佇まいなのでしょう。関西では3月1日~22日まで京都御所で公開されます。

桜の季節には早いですが、お出かけのコースに入れるのもいいかもしれませんね。

それでは、また。








【第7回】「伝統色」

こんにちは。国語科の上田です。櫻井先生のコラムに少しお邪魔します。

先月即位正殿の儀が行われ、天皇皇后両陛下の平安時代さながらの美しい衣装に目を奪われました。

今日お話したいのは天皇しか身に着けることのできないとされる「黄櫨染」(こうろぜん)という色のことです。これは皇太子の身に着ける「黄丹」(おうに)と共に絶対禁色(ぜったいきんじき)と呼ばれる色です。

冠位十二階などが有名ですが当時律令制により位によって着用する衣服の色は決められていました。冠位十二階では最も位の高い人が濃紫(濃い紫)最も低い位の人が黒、その中で最も位の低い人が薄い黒の衣服を着ていました。

これは濃い色で衣服を染めるには沢山の染料が必要なため、必然的に位の高い人が濃い色の衣服を位が下がるにつれ薄い色の衣服になったと言われています。

実はこのような染色という技術が発達する前の古代の日本は色というのはたった4色で表されていたといいます。

その4色は赤・青・白・黒です。

明るい色を赤、熟れていないものの色を青、はっきりしたものの色を白、暗いものの色を黒と分類していたようです。

その後染色の技術が色のバリエーションを豊富にしてきたと言えます。

面白いですね。

黄櫨染はきっと薄暗い中で見ると金色に近い色に見えたのではないかと思います。

平安時代や古文の中の人々の五感に思いを馳せてみませんか?

日本の伝統色↓

https://irocore.com/







【第6回】「御礼」

こんにちは。

今年度はⅢ期にわたって夏期講習が予定されており、ただいま第Ⅱ期が開講中です。


そして先週、第Ⅰ期古文の夏期講習が終わりました。


ここで改めて、受講者の皆さまにお礼申し上げます。


ありがとうございました。


そしてお疲れさまでした。


200枚超の教材プリントを入れた封筒の厚みが、日を追うごとに薄くなりました。日にちの経過を実感しました。


5日間という限られた時間でしたが、センター古文のコツやパターンをつかんでもらえたら幸いです。


あの一週間はほんの通過点。いまはそれぞれの目標に向かって、次の行動に移していることと思います。



来年の夏休みは皆さんが笑顔で過ごせていると信じています。


それでは、また。






第5回「 探究」

こんにちは。

古文担当の櫻井です。

大学のゼミでは日本語を専攻していました。

高校生の頃から古典作品や近代文学のほかに、日本語も研究したいと思っていました。

卒業論文のテーマも迷いに迷ったのですが、どの時代の文学作品もみな当時の日本語で記されたもの。それならばいっそ、日本語の表現を研究しよう!と決めたのです。

同じ単語でも現代語と古文では解釈が違うことは、皆さんも古文を学習していて経験済みのことでしょう。(例:「おどろく」「あはれ」など)

国土に言葉が誕生し、時代が流れ、生活様式や社会規範が変わりながらも、言葉そのものの「原形」はとどめる。

古文の授業では、そんな言葉の奥深さもお話しできたらと思います。

そして、数年前からハマってる書籍がこれ!↓

毎年調査されていますが、私はこの世論調査の回答者になりたいくらいです。

それでは、また。








第4回「 形容詞へのアプローチ」

こんにちは。過ごしやすい季節となりました。

窓を開け、心地いい空気を入れて、家の中の荷物を断捨離決行中です。

おもちゃ、衣類、書類その他の分別・処分・保管作業を、かれこれ一ヶ月半の間続けています。いまや私は『片づけモンスター』と化しています。

日常生活と並行しながらですので、作業が思うようにいかない日もあります。限られた時間でも「てきぱき」こなしていけば、いつか終わりがくると信じて日々奮闘しています。

この「てきぱきしている」状態を古語で表現するなら「はかばかし」でしょう。

動詞「はかどる」と同じ語源を持ちます。現代語「はかばかしい」に通じます。(「はかどる」の「はか」の表記は「捗」「果」)

古語、現代語ともに「物事や仕事が順調に進む」という意味ですが、「頼もしい」「(性格が)はっきりしている」「きちんとしている」など、文脈によって幅のある解釈がなされます。

物事の状態や性質を表す形容詞には、この「はかばかし」のように人物の性格を表すものもあります。また「はかばかし」と「はか」を重ねることで、より意味を強調するのも形容詞の特徴です。

古文を学習する上で、たくさんの形容詞を覚えるのが難しいと感じる人も多いでしょう。ひたすら書いて読んで覚える方法もありますが、語源が同じ動詞とまとまりで覚えたり、「はかばかし」のように解釈を関連づけて自分のものにすることもできます。

古語の形容詞に触れると、日本人が物の性質の微妙な違いを細やかな感覚で表現していた言葉だと感じ取れます。

さて私はそろそろ整理整頓に戻ります。

本日も目標地点まで「はかばかしく」ありますように・・・

それでは、また。

第3回 】「 新しい時代の風」

こんにちは。

今年の桜が散りましたね。

新元号や新紙幣発行の発表がされ、世間の賑わいも落ち着いた頃でしょうか。

新元号の「令和」

出典が万葉集の「梅花の歌」の序文ということで、万葉集の関連書籍に注目が集まっているようです。書籍だけでなく、万葉集ゆかりの地に足を運ぶ人々も増えるのではないでしょうか。

万葉集で思い出すのは、私が高校生の頃、国語の先生から推薦された永井路子著の「万葉恋歌」です。

タイトル通り、さまざまな立場の人の恋歌と解説が紹介されています。

古典を勉強するための入門書ではなく「ただ歌を感じる」お手伝いをしてくれる一冊です。

本書を読んでいると、古代も現代も恋を歌う感情は変わらないな・・・と身近に思える一方で、私たちは時代とともに変わりゆくもの、変わらないものが重なり合った空間を生きていると再認識するのです。


【第2回】「つなぐ言葉」

こんにちは。

前回では、身近なことわざが古典への道しるべとなります、と紹介しました。

「好きこそものの上手なれ」以外にもこんなことわざがありますよ。

①時は金なり

②急がばまわれ

③命長ければ恥多し

①では文末の断定の助動詞「なり」に気がつきましたか?

②、③では接続助詞「ば」を含んでいるものを挙げています。

いきなりですが、古典文法において接続助詞「ば」をマスターしておいて損はありません!

接続助詞「ば」は未然形または已然形に接続しますが、どちらに接続するかで解釈が変わります。

先の例で言いますと、未然形接続の②と已然形接続の③では解釈が異なります。

ポイントとして未然形は「いまだ然らず」の状態ですから「もし~ならば」という順接仮定を、已然形は「すでに然り」状態ですから「~ので」と順接確定を表します。これを踏まえて②を解釈しますと「急いでいるならば回り道をしなさい」と、③は「長生きをしているので、恥をかくことも多い」となります。

前後の文章や文節をつなぐのが接続助詞の役目。

古文読解文で接続助詞「ば」が登場すると、主語が変わったり、場面が展開されることはよくあります。

たった一語の「ば」

そのひとことを意識すれ「ば」、読解のコツがつかめますよ。

それでは、また

【第1回】「好きこそものの上手なれ」

ごあいさつ

皆さんはじめまして。櫻井です。

英學會1年目の昭和生まれの新人です。

担当は古文・小論文です。

今日はご挨拶代わりにこんな言葉を紹介したいと思っています。

「好きこそものの上手なれ」


皆さんもよくご存じのことわざでしょう。

これは私が好きなことわざの中の一つです。

「好きであることが上達への近道である。」

という意味です。

このことわざにある古文の要素についてお話ししたいと思います。

古典文法の必須項目である「係り結び」。

この言葉を一度耳にしたことはあるでしょう。

係助詞がくると、文末の結びは已然形か連体形となります。

「好きこそ」の「こそ」は係助詞で、結びは已然形が入る法則です。

となると、「ものの上手なれ」の「なれ」が結びです。

この「なれ」は断定の助動詞「なり」の已然形です。

この場合「ものの上手」という体言に接続しています。

前述したように、係結びには連体形で結ぶ場合もありますが、

已然形で結ぶのは係助詞が「こそ」のみです。

今後古文を学習するにあたり「こそ」の結び探しに迷ったら、

このことわざを思い出してみてください。

古文は日本語であって日本語でない、不思議な言葉の集合体です。

ですが、このように身近なことわざから、古文への道しるべになることがあります。

いかがでしたか?

「ことわざの中に古典文法を発見!」という人、ご一報ください。

検証してみましょう。

少々長いごあいさつとなりましたが、今日のところはこの辺で。

それでは、また。